住まいを“負動産”にしないアイデアって?「マイホーム価値革命」著者に聞いてみた

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住まいを“負動産”にしないアイデアって?「マイホーム価値革命」著者に聞いてみた

 
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あと5年で広大な面積の生産緑地が宅地になり、団塊世代の大量の戸建てやマンションが放出されて住宅マーケットは激変、多くのマイホームが“負動産”になりかねない時代が来る。住宅の価値を高めるには、これまでの常識にとらわれない柔らかな発想が必要だ――。そう主張する『マイホーム価値革命〜2022年、「不動産」の常識が変わる』の著者 牧野知弘さんに、これからどうやって住宅選びをすべきなのか、具体的なアイデアやヒントを聞いてみた。

マイホームが危ない 〜 あと5年で住宅大量供給が起きる

― 「2022年」に注目されている理由を教えてください。あと5年で何が起きますか。
大都市の生産緑地指定(1991年3月に改正された「生産緑地法」によって、指定された土地を農地や緑地として残す制度)が解除されて大量の農地が宅地になるうえ、地方から出てきた多くの団塊世代(1947〜1949年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)の仲間入りをするからです。全国の生産緑地のうち、約8割は東京圏、愛知県、大阪府の6都府県に存在しますが、人口減少と高齢化で新たな住宅需要が見込めないにもかかわらず、宅地化された農地の多くでは賃貸住宅建設が増えると予想されます。さらに、日常的に介護や医療に依存して自立できない団塊世代が高齢者向け住宅や施設に入って自宅を手放したり、貸し出したりするので、中古市場や賃貸市場の需給バランスが大きく崩れます。

― ずいぶん悲観的な見方ですが、希望はないのですか。
多くの団塊の世代にとっては厳しい見通しかもしれません。せっかく手に入れたマイホームが、自分の子どもが住まない、売れない、貸せないで維持管理費ばかりがかかる“負動産”になりかねないからです。絶対的に住宅が不足していた時代の「みんなが買っているから私も買う」、「多額の住宅ローンを背負っても買っておけば財産となるので安心」といった価値観が通用しなくなります。でも、これからマイホームを考える人たちにとっては、アイデア次第で自分のライフスタイルに合った住宅選びや資産活用ができる面白い時代ともいえます。
2022年を境にマイホームに対する価値観は様変わりする、と語る牧野さん

【画像1】牧野知弘氏(写真撮影/松村徹)

【画像1】牧野知弘氏(写真撮影/松村徹)

マイホームの新たな投資戦略 〜 「貸すマイホーム」には大きなチャンスが

― 「すでにタワーマンションや海外物件など不動産の一部は、インターネットを介してキーボードのエンターキーで取引されるようになっている」とも指摘されていますね。
都心マンションはスピード勝負で、目利きの能力も問われるインターネット取引の対象になっていますが、ほとんどの人はそういった競争にはついていけないと思います。ネットでマンションを売買するような海外の富裕層は、そもそも買った家に住もうなどとは思っておらず、「投資」に徹して不動産を購入し、売ることも躊躇しないからです。

― マイホームに住みながら資産価値も維持するのは難しい、ということですか。
マイホームを買っておきさえすれば、いずれ値上がりして利益を得られる、つまり「投資」に成功するとは期待できなくなっています。ただ、「投資」には狩猟型と農耕型があり、新築マンションの分譲やネットでマンションを売買して儲けるのを狩猟型だとすれば、マイホームを貸して利益を得るのは農耕型です。住宅がどんどん余ってくるこれからの時代は、「貸すマイホーム」にこそ大きなチャンスがあると思います。

― 「貸すマイホーム」とは具体的にどんなものですか。
たとえばAさんは、もともと新築マンションを買って住むつもりだったのですが、最終的に繁華街にある更地を買って3階建ての建物を建てて自分が最上階に住み、1階と2階を貸し出して借入金返済のほとんどを賃貸収入でまかなっています。

― それってよくある話に聞こえますが。
ポイントは、Aさんが最初から「貸す」ことを念頭にプランを立て、事前に出店意向を確認してから土地を購入したことです。マーケットの家賃水準を確認したうえで、きちんと利益が出る価格になるまで売り手と交渉してから土地を購入しました。相続税対策で投資効率がいいからと安易にワンルームマンションを建てる地主は多いですが、借り手の二―ズを探るマーケティングをほとんどしていないのが実情です。逆に言えば、そこにチャンスがあるのです。

― 二世帯住宅にもチャンスはありますか。
売り手にとって売りにくいと言われる二世帯住宅は、買い手からすると安く買えるうえ「貸すマイホーム」に適しています。特に、1階と2階で玄関や門扉まですべて独立した完全分離型がお勧めです。新築マンションを探していたBさんも、マンションとそれほど変わらない値段まで値引き交渉して中古の二世帯住宅を買い、2階にBさんと家族が住み、1階を住宅として貸し出しました。もちろん、そのエリアのマーケットの家賃水準も事前にしっかり調べたうえでの決断です。完全分離型でないなら、外階段を付けるなどして完全分離型にリフォームすることを前提に売り手と価格交渉すればよいと思います。

― 「貸すマイホーム」の可能性は広がりそうですね。
既存の賃貸住宅と差別化するため、シェアハウスや民泊として貸し出してもいいかもしれません。松村さんが記事を書いておられた「猫付きシェアハウス」なんかもニーズがありそうですね。ポイントは、マーケティングや運営に関して外部のプロの助けを借りることです。ただし、こういったタイプの住宅の企画や運営には不動産プロデューサー的な視点や能力が求められますから、既存の不動産ビジネス自体が変革を迫られることになります。

DIY住宅で住み倒す 〜 中古住宅大量供給時代のマイホーム戦略

― マイホームを買わずに賃貸住宅に住むという選択肢もありますが。
もちろんです。家賃を「投資」ではなく生活のためのコストと割り切れば、ライフステージに応じて住み替えられるので生活空間に無駄がありませんし、マイホームを購入するよりもはるかにリスクが低く効率的な生き方ができます。マイホームにはマイホームの良さがあり、賃貸には賃貸の良さがあります。
また、家賃をコストと割り切る考え方を突き詰めると、みんなで住んでシェアすればいいのではないか、という発想になります。これが若い世代のライフスタイルの一つとして定着しつつあるシェアハウスです。さらに、今後は賃貸住宅が大量供給されるので、ニーズがあるのに数が少ないファミリー向け賃貸住宅も充足されるでしょうし、高齢者でも賃貸住宅が借りやすくなるはずです。

― 「DIY住宅を住み倒す」とおっしゃっていますが、どういうことですか。
中古住宅の大量供給でマイホームの購入コストが大幅に下がるなら、賃貸派であっても中古のマイホームを手に入れて住み倒すのもありだということです。マイホームで「投資」するという甘い考えを捨てて、人に売ることなど一切考えず住まいとしての「効用」だけを最大化するのです。リフォームをプロに任せず、自分で好きなように改修(DIY)すると経済的だし楽しいでしょう。住まいがその人のステータスではなくライフスタイルを表すものになれば、持ち家派vs.賃貸派の損得比較自体意味がなくなるはずです。

― 「投資」という考えをきっぱり捨てれば、新しい展開もありそうですね。
住宅利用の可能性が広がります。私の知人の建築家は、地方の古民家を借りて徹底的に自分好みにDIYして楽しく暮らしています。大家さんはその家を売るつもりはないので、好きなように手を入れて住んでくれて良いという考えで、大家さんも借家人もハッピーな住宅活用法といえます。また、二世帯住宅で空いた住戸を、シングルマザーのために提供したいという相談も受けていますよ。

― 戸建ての事例が多いようですが。
実は、戸建ての方がマンションよりこういった多様な活用方法になじみやすいといえます。マンションは仕様や管理が標準化されていて「投資」目的のインターネット取引に適している反面、自由にできることが専有部内と管理規約内に限定されますが、戸建ては個別性が強くて改修も自由なので住宅としてエッジを立てやすいからです。また、住み倒すつもりで自分の趣味嗜好を徹底的に追求した戸建て住宅なら、SNSで全国から買手を探せるかもしれません。個別性の強い戸建ては「投資」目的のインターネット取引にはなじみませんが、住んでみたいという「効用」目的の特定少数ファンをつかめる可能性は高いといえます。

【画像2】牧野知弘氏(右)に質問する筆者(写真撮影/松村徹)

【画像2】牧野知弘氏(右)に質問する筆者(写真撮影/松村徹)

●プロフィール
牧野知弘
オラガ総研株式会社代表取締役。東京大学卒業後、ボストンコンサルティンググループなどを経て、三井不動産に入社。不動産買収、開発、証券化業務を手がける。現在は不動産全般のアドバイザリー業務を行う。『空き家問題』(祥伝社新書)、『2020年マンション大崩壊』(文春新書)ほか著書も多数。●関連記事
都市近郊の農地がなくなる?”生産緑地、2022年問題”を知っていますか
・大阪にもできた「猫付きシェアハウス」 今後も増える?
・定年後に親と同居【6】その後【後編】「嫁」も笑顔で暮らせる工夫
(松村 徹)






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